医療の質・安全学会誌の編集長を務めさせていただいております群馬大学の小松です。今回は「学会」ならびに「学術活動」について考えてみたいと思います。

本学会の設立趣意書は、医療の質・安全学会の目標(パーパス)が「健康を大切にし、安心して暮らせる社会」を実現すること、使命(ミッション)が「新しい医療のあり方、システムとして患者本位の医療の質と安全を保証するしくみを創り出す」ことにあることを示しています。さて私たちは、いかにしてこの使命に応えることができるでしょうか。

私が医師となって20年目の2004年、セントルイスで開催された米国腎臓学会で私の働き方、考え方に大きな影響を与える視点に出会うことができました。キャリアパスに関するワークショップの中で、バンダ―ビルト大学のWendy Weinstock Brown先生が、Boyer博士のScholarshipに関する新たな概念を紹介してくれたのです。Boyer博士はカーネギー教育振興財団会長を務め、米国の大学教育を発展させた「教師の教師」といわれた方です。わずか147頁の著者、「大学教授職の使命―スカラーシップ再考」は、Scholarship(学術活動・学究活動)の範囲を、知識の「発見(scholarship of discovery)」という狭義の研究だけでなく、「統合(integration)」,「応用(application)」、「教育(teaching)」に拡大したのです。Scholarshipを「学識」と訳している論文もありますが、「確かに、Scholarshipとはオリジナルな研究に従事することを意味する。しかし、Scholar(学者)の仕事は、関連を見出し、理論と実践をつなぎ、さらに自らの知識を効果的に教えることも意味するものである」との記述からは、学術活動と訳すのが適切でしょう。この視点に立てば、研究者だけでなく実践家も、新たな知見を自らの業務に取り入れ、統合、応用、教育することで学術活動を推進できますし、日々の実践の中で生まれた疑問を整理し、自らあるいは他の専門家とともに研究をすすめ、知識の創生につなげることができます。

学会ならびに学会誌は、多くの知と経験が融合し、発展する「場」を提供します。忙しく、苦労も多い日々ですが、常に好奇心と創意工夫をすすめる姿勢を持ち続けていきたいと思っています。会員の皆様には、学会発表ならびに学会誌への投稿をお願いいたします。