このコラムの担当の広報委員会委員長とともに、第17回医療の質・安全学会学術集会で副大会長を務めさせていただいております。現在、寺井大会長のもと、山口プログラム委員長、甲斐プログラム副委員長をはじめ多くの皆様の支援を頂き、学術集会の準備中です。この場を借りて御礼申し上げますとともに、その過程で、医療の質・安全と言っても、専門性の異なる多くの皆さまとの交流はとても刺激的です。

私の医療安全の出自は、医療安全のフィールドの中でも、「チーム医療」の窓から医療安全の扉を叩いたことから始まりました。それまで、医療安全をかじってはいたものの、事故対応のための局所最適化に腐心する日々と、組織の協力感の無さにささやかな苛立ちを募らせていた時、チーム医療強化プログラムのTeamSTEPPSに出会いました。当初、私の師匠の少したどたどしい日本語と「Patient Safety」への想いに興味を抱きつつ、TeamSTEPPSのツールの言葉の理解と使い方を学ぶことから入りました。つまり、「形」から入ったのです。「形から入る」と言うと、あまり良い響きでありませんが、「行動をおこす」という点では、まず形式から始めて頑張ろうという志(こころざし)は、決して悪くはないかと思います。ただ、型を学んだだけの知識だけでは、現場ではあまり役に立ちません。

千利休の訓をまとめた『利休道歌』に中の、「規矩作法 守り尽くして破るとも離るるとても本を忘るな」から、「守破離」という修業における過程を示した言葉が知られています。「守」は、教えを忠実に学び,型や作法、知識を正確に習得する段階を指しますが、「破」は、経験と鍛錬を重ねたうえで、教えを土台に、自分なりに本質を体得することを意味し、不要な型を削ることも含まれます。「離」は、教えに匹敵する習得の上で、本質を忘れることなく新たな知識(技術)を生み出す最終型を意味します。これは、「レジリエンス」のルーツでしょうか?左様、医療安全の教えは、TeamSTEPPSにかかわらず、「なければならない!」と、その型にこだわるのではなく、本質を理解しながらそこから導き出された知恵・コツを新たな形にしつつ、現場に還元していくのが本懐ではないでしょうか。そして、その新しい機知を共有する場の一つが、学会ではないかと思うのです。但し、私の敬愛する、故十八代目中村勘三郎は、座右の銘の中で、「型があるから型破り、型が無ければ形無し」と、レジリエンスと共に、標準手順の重要性を謳っています。

次回、第17回医療の質・安全学会学術集会のテーマは、「現場から生まれる医療の質・安全の知」です。ご支援の程、どうぞよろしくお願いします。