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わが国の医療プロフェッションのあり方
−医師の自立的懲戒制度の確立を−

医療の質・安全学会 理事長 高久史麿

 医療の質・安全学会の第2回学術集会が東北大学教授上原鳴夫会長主催の下、2007年11月23,24日の2日間にわたって東京国際フォーラムで開催された。3日目の11月25日に行われたWHO と学会との共催の国際シンポジウム『21世紀の医療と医療システムを求めて』並びに医療安全推進週間公開フォーラム『みんなで創ろう、私たちの医療―患者・医療者・地域社会の取り組み』も学会の学術集会と同様、極めて盛会の中に無事終了した。第2回の学術集会でも第1回の集会と同様に医療の質・安全を巡って様々な分野の方々からの発表があり、活発な議論が行われた。私は2日目の午前の第一会場のワークショップ5『医療の質保証とプロフェッションの役割』の司会を佐賀大学小泉俊三教授と一緒にさせていただいた。このワークショップの内容は、小泉教授が第2回学術集会の報告として本誌に報告されることになっているのでその詳細の紹介は省くが、このワークショップでの発表、並びにその後の討論の中でなされた今後のわが国の医療プロフェッションのあり方に関する議論をワークショップの司会者としてまとめる中で、私はわが国の医療プロフェッションのあり方を医療の質・安全学会が提案すべきではないかと考え、このワークショップのまとめを本誌のEditorialの形で述べることとした。
 今回のワークショップの中で金沢大学野村英樹准教授は、先進諸国で苦情申し立ての対象となった医師の調査、スタンダードを維持できない医師に対する再教育や免許停止ないし取り消し処分をプロフェッションの代表等が行ってきたこと、更に最近ではこれらの処分の決定に非専門職も参加するようになったことを紹介された。又同じく演者の一人の高中正彦弁護士は、日本の弁護士は全員が弁護士会による資格審査を経て弁護士会と日本弁護士連合会とに加入していること、又弁護士会が行っている自治的懲戒制度について紹介された。
 このワークショップでは、演者の方々が熱心に話されたので、十分な討論の時間がなかったが、フロアの方々を交えた討論の中で話題となったことは将来的にはわが国の医師も弁護士と同じように、全員が医師会に加入する必要があるということと、医師会も弁護士会と同じように自治的懲戒制度を作るべきであるということであった。前者の医師会への全員加入には当然多くの異論があり、その実現は容易ではないと思うが、わが国の医療プロフェッショナルのあり方、特に医師の自治的懲戒制度の実現を考えると、このことは避けて通れないであろう。もう1つのテーマである医師の自治的懲戒制度は、わが国で現在行われている医道審議会による医師に対する行政処分が刑事処分を受けた医師だけを対象としていることに対して医師の間からも強い批判があること、又医師による自治的懲戒制度の導入は、医療に対する国民からの信頼度を高めるためにも医療プロフェッションとして是非行うべきであると考え、本誌のEditorialの形で提唱したい。何れの課題もその実現には解決すべき多くの問題があることは誰もが認める所であるが、同時に又これらの提案は多くの医師が従来から医療プロフェッショナルのあるべき姿として考えてきたことである。第2回の医療の質・安全学会でこの様な提案がなされたことの意義は大きいと考える。

(「医療の質・安全学会誌」第2巻第4号掲載)

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