医療はいま新しい時代を迎えています。 人生のどこかで誰でも一度は医療を経験し、健康のありがたさを実感します。 医療技術が日進月歩で発展しこれまであきらめていたような病気にも光が射す一方で、医療が持つリスクや医療の不確実さが次第に明らかになってきました。 医療の選択肢は広がりましたが、その分、患者さんの意思と医療参加、患者さんと医療者との共同作業がかつてなく重要な意味を持つようになっています。 また、医療技術の飛躍的な進歩からともすれば技術を過信する風潮も見られ、「人」が中心の医療を求める声も高まっています。
自分に適した医療を選び、参加し、患者本位の医療を実現するためには、患者‐医療者の緊密なパートナーシップとこれを支える地域社会の支援、医療機関の組織的な取組み、そして、これらを可能にする政策と制度的なしくみが不可欠です。 「患者本位の医療」は患者・医療者はもとよりすべての人々の願いですが、思いだけで実現するものではなく、これを実現するための具体的な行動を必要としています。
これまで「医療はお任せするもの」だった日本でも、さまざまな立場から、さまざまな形で、「患者本位の医療」をめざし「患者・市民の医療参加」を支える活動が始まっています。 しかしこのような活動は総じてあまり目立たず、知らない人も多く、そういった活動があることを知れば自分も手伝いたいと思う市民、サービスや情報を利用したいと思う患者さん、自分たちもやってみようと思う医療機関は少なくないと思われます。 また、同じ立場に立つ活動はそれぞれに交流があるものの、立場を超えた交流の機会は少ないのが実情です。 立場は異なるが同じ目的で活動する人々が、互いの活動を理解しあうことで「新しい医療のかたち」を創るさまざまな試みが生まれやすくなり、また、このような活動の意義が広く認知されることで活動の普及・発展に必要な支援のしくみや制度づくりが進むことを願っています。
このような趣旨から、来る11月25日(日)に開催される医療の質・安全学会第2回学術集会・国際シンポジウム「21世紀の医療と医療システムを求めて」(WHO共催)の特別企画として、医療安全推進週間公開フォーラム「みんなで創ろう、私たちの医療 ― 患者・医療者・地域社会の取組み」(厚生労働省共催)の開催を企画いたしました。 同フォーラムでは、患者本位の医療をめざし患者・市民の医療参加を支える地域社会の活動(患者・市民グループ、自治体、企業他)と医療機関の取組みを展望し、パートナーシップに基づく新しい医療のかたちを示唆する意欲的な取組みを紹介します。
皆様のご協力により、同フォーラムが名実ともに地域に開かれた医療の新時代を告げる有意義な会となることを祈念し、市民、患者、医療者、研究者、行政、企業など、さまざまな立場から幅広いご参加をいただきますようお願い申し上げます。
医療の質・安全学会第2回学術集会
会長 上原 鳴夫(東北大学)
医療安全推進週間 公開フォーラム企画会議
伊藤 雅治 (全国社会保険協会連合会)
大熊 由紀子 (国際医療福祉大学)
大平 勝美 (はばたき福祉財団)
開原 成允 (国際医療福祉大学)
五阿弥 宏安 (讀賣新聞)
迫田 朋子 (日本放送協会)
佐原 康之 (厚生労働省医療安全推進室)
杉江 拓也 (WHO西太平洋地域事務局)
埴岡 健一 (東京大学医療政策人材養成講座)
丸木 一成(国際医療福祉大学)(企画会議代表)
山内 桂子 (医療安全の心理学研究会)
和田 ちひろ (いいなステーション)