20世紀に飛躍的な進歩を遂げた現代医療は、技術の革新と発展に支えられてきました。かつては及びもつかなかった領域に手が届くようになり、不可能と思われていたことを可能にしてきました。しかし、光が影を作るように、技術に主導された現代医療は、研ぎ澄まされた両刃の剣を安全に使いこなす知恵としくみとシステムの発展を置き去りにしてきたことで、医療への過度の期待と医療に起因する死亡や傷害の増加という矛盾をもたらしました。欧米の調査では入院患者の3%〜16%が医療行為に伴う何らかの傷害(有害事象)を経験し、米国医療の質委員会の報告書(1999年)は、そのうち半数強は回避可能なもので、これらの傷害が関与して死亡したと推定される死亡者の数は4万4千人から9万8千人に上り、医療システムの質と安全を早急に改善しなければならないと警告しました。これを契機として世界各国で医療安全の取り組みが始まり、米国では3千を超える病院が参加して「10万人の命を救え」キャンペーンを展開しました。これによって12万人の命を護ることに成功したと報告しています。
医療の質・安全学会第2回学術集会では、医療の質・安全の向上をめざす学際的な研究発表と創意に満ちた意欲的な活動報告のほか、「患者本位の質と安全を実現する医療と医療システム」のあるべき姿について国内外の著名な方々と医療界を牽引するリーダーの方々にご提言をいただき、いま私たちにできること、なすべきことは何かをともに考えます。また、国際シンポジウム(WHO共催)と医療安全推進週間公開フォーラム「みんなで創ろう、私たちの医療−患者、医療者、地域社会の取組み」(厚生労働省共催)を開催し、患者・市民・地域社会の役割とパートナーシップのあり方を探ります。
多くの方々にご参加いただき活発なご討議をいただきますようご案内申し上げます。